お客様邸訪問INTERVIEW

ここがスゴイっていうんじゃなく、暮らしていることごく自然に、
あぁこういうのが幸せなんだと思えるんです。

土間のある家 vol.3W様邸 (2007年2月ご入居)

打ち合わせで使った図面や、雑誌の切り抜き、スナップ写真、手書きのスケッチなどは、スクラップブック数冊分に及ぶ。お客様のご要望を共有するため、また、異なるイメージなども一緒に検討していくことで、お客様にとってより精度の高い「住みたい家」が完成する。

豊かさって何なのか改めて気づく。
こだわりだ何だというより、とても自然なもの。

W様からは、最初にどんな要望があったんですか?

奥様
私はお掃除が好きだから、床なんか毎日磨くんだけれど、アパートだと5年10年で剥げて白くなって、それで終わり。でもここは、傷ついたってお湯で拭いたら戻るんだよ。自然の回復力のすごさ!天井が高いと小さなスピーカーでも音楽がよく響くし、日本の尺は私たちのカラダに合っていてちょっとイスに上がれば手が届く。こだわりだ何だっていうより、普通に暮らしていて「ああ、こういうものなんだ」って気づかされるのが自然のすごいところよね。
ご主人
夜照明を落とすと、ピクチャーウィンドウから眺めが結構キレイなんですよ。信号の赤と緑の光だとか、星が出てるときなんかね、なかなか。
奥様
普通の蛍光灯と違って光が静かだから、外からは意外に見えないんですよ。だからカーテンも何もない状態で使ってるの。
専務
この家の照明はすべて白熱灯なんです。
奥様
光がやわらかいんです。暗いくらいなんだけれど、慣れると非常にやさしくてキレイですよ。蛍光灯は仕事する時だけ。
専務
人間のカラダって、朝日の光で覚醒するんですって。昼間働いて、夕方オレンジ色の光でクールダウンして寝るというのが自然の周期。昼でも夜でもどんどん照らして、電気をバチっと消して寝るって言うんだけど、細胞は眠れないって。
奥様
日本は明るいことが文化だけれど、逆にろうそくの灯りっていうのは非常に贅沢よね。
専務
・・・と、こんなことを話しながらプランを変えていくでしょ。だから図面なんてそうそう進まないんですよ(笑)

(1) 手持ちの食器棚の裏側は食品庫になっていて、想像以上に活用しているとのこと。「全部が真四角だと、意外に疲れる。鍵型に隠れるこの「隅っこ」があるとラク」だと奥様。さらに食品庫の上はロフトになっており上部の空間も活用できる。(2) 和室天井の意匠は杉柾目の網代編み(あじろあみ)。 (3) リビングに隣り合う書院づくりの和室は、広縁をはさんでテラスに繋がる。 浮いているかのようにしつらえた飾り棚の後ろはデッドスペースを活かしたモノ入れ。 (4) 浴室は薫り高いヒノキ。脱衣所のベンチは、ご主人の実家に眠っていた栗の材木を活用した。 (5) 今回インタビューにご協力いただいたご主人とのツーショット。

―プロデュース担当:横山から

W夫妻とは時間をかけてじっくりとつきあい理解を深めてきました。物を見る目があり、しかも多趣味なこの夫妻が、子育てをひと段落した後の人生を楽しむための和の家です。 奥様のたっての希望だった土間は、かつての日本家屋なら必ず設けられていたスペースです。土間で煮炊きをし、雨雪を払い、来客時の気さくなもてなしのスペースになった。この「間」があることで暮らしが非常に豊かになると思ったから、石を貼り床暖房をいれてもっと使い勝手を高めました。樹の根本まで使った3間もの梁を提案したのも、道具を手入れする手間を惜しまないW夫妻だからこそです。 当初はコスト中心に考えていたプランを、徐々に「夫婦のセカンドハウス」と位置づけ、土間やテラスを広げたり玄関の正面に中庭を設けたりすることによって、必要な機能をコンパクトにまとめただけではない、ゆとりにあふれた住まいになったはずです。 家づくりとは、すべてが積み重ねです。どこかにお金や時間をかけてどこか手を抜いた訳ではないから、"こだわり"を聞かれても"全部"としか言えないんですよね。

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