風義ブログBLOG

2015.02.10
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工業デザインの草分け・栄久庵憲司氏 死去。

 1961年に登場した「キッコーマンの卓上醤油」は、日本ではもちろん世界中で支持されるロングライフデザインです。

 その当時、醤油の購入は自前の瓶を小売店へ持っていき、醤油樽から一合くらい小分けで入手していました。食卓や調理に醤油が必要になれば、その瓶から醤油差しに移し替えていたのです。少なくとも2回以上、醤油の移し替えが必要な時代でした。面倒で手間のかかる作業でありましたが、生活習慣としてその作業は定着していました。

 「生活革新」が話題となった1960年代は、パッケージにおいては利便性や商品訴求を求めて包装方法や表現方法が大変化した時代でもあります。キッコーマン卓上醤油は工場で中身を詰め、そのまま卓上で使えます。ポイントは、直接工場から醤油を提供できること。さらに、卓上で使用する安定感やクラフト感などを考慮し大量生産を意図したデザイン戦略がおこなわれます。

 ブレークスルーポイントは、液だれせずに気持ち良く注げる醤油の「キレ」。試行錯誤の末、注ぎ口が水平に伸びる直線デザインとなりました。詰め替えの「瓶」から「器」として昇華したのです。この時期の日本の生活は変革期でもあり、キッコーマンの卓上醤油はベストマッチしたのでしょう。

 デザインは、GKインダストリアルデザイン研究所を設立した栄久庵憲司氏(えくあん・けんじ)。初代の秋田新幹線やJR成田エクスプレス、ヤマハ発動機のオートバイなどのデザインのほか、コスモ石油やミニストップの企業ロゴなどビジネスにデザインの概念を定着させました。日本のデザイナーは、市場からでも、技術からでも、生活からでもデザインを生み出せる高い能力があるのです。

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参考資料

青木史郎 2014 「インダストリアルデザイン講義」 東京大学出版会

 GKデザイングループ・GK史編集委員会 2002 「GK Design 50years 1952-2002」 六耀社

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