例えばこんなご提案PLANNING

床による空間の自在性目に見えない壁で空間を仕切る

空間の境界線は壁や間仕切りだけではありません。床(ゆか)が変わることでも空間には境界線が生まれます。どういうことかと言いますと、床の素材を変える、高さを変える(段差をつける)ことで目に見えない壁を生み出したり、空間の広がりや繋がりを生み出すことが自在になるのです。例えば、分かりやすいところでは玄関。日本は履物の着脱を玄関で行い、靴を脱いで床へ上がります。西洋では地面と床が連続していますから、靴を脱ぐ必要はありませんね。この場合、玄関は「屋外」ではなく「屋内」です。屋内に段差を設けることで「空間の境界線をつくる」という意味がお分かり頂けましたでしょうか?

玄関や勝手口の床から一段高い板の間は日本では草履や靴を脱ぎ、くつ下や裸足で上がります。ここで足裏へ集中している五感は会津百年杉のぬくもりとやわらかさをしっかりと感じさせてくれます。靴やインナーシューズですごす他国の文化とは大きく違うところではないでしょうか。
また、玄関から板の間へ素材をチェンジすることでしっかりと境界線を生み出すことにも成功しています。さらにこの板の間と外の縁台やウッドデッキをできる限り段差をつけないデザインとすることでここでも「あいまいな、どちらともつかない空間」が生まれます。同じ素材ならさらにGOOD!フローリングのカラーで自分色を見つけたり、バリアフリーを取り入れたりすることも大切な家づくりの一つですが、床の文化や床の未来のスタイルを考慮し、床の魅力を引き出す空間を創造することも楽しいですね。

さて、この中間領域を生み出すデザインとして、土間床(もちろん蓄熱性にも着目!)を住まいに採用するケースが増えています。簡略化したいのであればコンクリートやモルタルで仕上げ、素材にこだわりたければ石材やタイルなどチョイスすれば良いですね。冷たさが気になるようであればその性質(熱伝導率)を利用し、温水熱や太陽熱を蓄えることで解決できます。夏は地熱によりひんやりとさせることも可能です。かつては家事や仕事の空間であった脇役の土間を現代の生活様式の主役とし積極的に取り入れ、LDKや趣味室などに採用することで「曖昧などちらともつかない空間」を五感に働きかけることも可能です。