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2015.02.14
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「量から質」への転換。

 現在、モノあまり時代のため「量から質」への転換が各業界で議論されています。住宅業界においても同様です。「量から質」の質とは一体どのようなことなのでしょうか。

 一定量の住宅量を確保する政策から、住環境・住サービスを含めた住生活の向上を目指したと思われる「住生活基本法」は2006年に制定されました。しかし、そこには住生活とは何かと明確化されておらず、基本法では住生活の質を確認することが私では困難でした。

 それでは、住生活の質を考えるには、何がポイントになるのでしょうか。過去の住宅系の研究調査によると「近代家族」の生活の行為がポイントになるとの記載があります。これまでは、一定量の住宅を確保することにより量に関する住宅政策には成功してきました。しかし、既存の住宅を見るかぎりでは住宅の質は十分でないように見受けられます。つまり、近代家族の住生活を満足している状況ではないのです。

 近代以前の生活では、親族集団や近隣や村などの共同体に生活行為の責任がありました。対して、近代以降では家族に責任が課せられ、家族の内部でそれを果たさなければならなくなりました。そのため、家族関係に愛情があることが規範とされてきたと家族社会学の山田昌弘さんは述べています。(山田昌弘 1994「近代家族のゆくえ」新曜社)つまり、近代家族は従来の共同体での機能を、家族内部にて受け止めることを要請されているのです。しかし、核家族化の進展やシングル世帯の増加など「家族形態」の変化により、生活行為の責任を十分に果たしていないのが現状です。 

 生活の行為は、寝る、食べる、装う、憩う、など家族それぞれ多種多彩です。昨今では、調理・洗濯・養育・介護などといった生活行為は家族内部で消費するだけでなく、社会化や外部化により外注化することもできます。つまり、近代家族の生活行為による住居における機能の変化は、住宅の質に関する価値観の尺度表現を困難にしているのです。

 今後、住生活の質を語る上では、工学で論じられる性能値ではなく、生き方や暮らし方などの社会学的な観点で論じることが「量から質」への転換を図る上での鍵となるのではないかと学んでいます。

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門田黒岩の家。流し台シンクから眺める景色です。完成は5月。

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